法華経・方便品第二(2)

デーヴァナーガリーはBibliotheca Buddica 10. のものをそのまま１行ずつ用いた。 (p.29 7〜12)

7. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	形中単主	理解しにくい
   	名男単呼	(人名)よ
   	名中単主	あいまいに語られたものは
   	名男複属	如来たちの
   	名男複属	阿羅漢の
   	形幹	正しい
   	← 過分男複属	目覚めた
   	名中単主	それは
   	名中単属	何の

   
   日本語訳…… シャーリプトラよ、 正しく目覚めた阿羅漢である如来たちのあいまいに語ったものは理解しにくい。 それはなぜかというと、…
   備考…… Ｋ訳「随宜所説、意趣難解、舎利弗」に相当。
   次文まで訳した。
   
   
8. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	前	ため
   	形幹	自己の
   	名男複対	信念
   	名男複対	法、教えを
   	←使能現複３	見せる
   	形幹	種々の
   	名男幹	巧妙な方法
   	名中幹	便利
   	名中幹	知識
   	名中幹	見解、観察
   	名男幹	原因
   	名中幹	行為
   	→名女幹	命令、記述

   
   日本語訳…… 自己の信念である教えを、 種々の巧妙で便利な方法の知識や見解と、 行為の原因についての記述と、 その根拠の説明を知らせることによって、 〜見せるからである。
   備考…… Ｋ訳「吾従成仏已来、種種因縁、種種比喩、広演言教」あたりに相当。 それにしても「吾従成仏已来」というのはどこから出てくるのだろう！
   以後の長大な複合語は次文に続くが、 「〜によって」という形でこの文の(見せる)にかかっている。 上の訳ではこの複合語全体を含めて訳している。
   なお、〜部分は次文の内容が入る。
   というのは本来はだが、 (指示、教義)にひきずられた形であろう。
   
   
9. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	名中幹	依拠
   	名女幹	語源的な説明
   	名女複具	知らせることによって
   	代中複具×２	それら×２ →さまざまな
   	名男幹	巧妙な方法
   	名中複具	便利
   	代中単処×２	それ×２ →さまざまなもの
   	←過分男複対	[処]に執着した
   	名男複対	衆生を
   	←不定	解放する

   
   日本語訳…… さまざまな巧妙で便利な方法によって、 さまざまなものに執着した衆生を解放するために
   備考…… 本文の訳は前文の「〜」部分に入れてまとめるべきである。
   Ｋ訳では「無数方便、引導衆生、令離諸著」に相当。 なお、Ｋ訳の次の「所以者何」に相当する部分はない。
   
   
   
10. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	頭	偉大な
    	名男幹	巧妙な方法
    	名中幹	便利
    	名中幹	知識
    	名中幹	見解、観察
    	形幹	最高の
    	名女幹	完成
    	←過分男複主	得られた
    	名男単呼	(人名)よ
    	名男複主	如来たちは
    	名男複主	阿羅漢である
    	形幹	正しい
    	(←) 過分男複主	目覚めた

    
    日本語訳…… シャーリプトラよ、正しく目覚めた阿羅漢である如来たちは、 偉大なる便利で巧妙な方法に関する知識と見解について、最高に熟達している。
    備考…… Ｋ訳「如来方便、知見波羅蜜、皆已具足、舎利弗」に相当。
    
    
11. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	頭＋名男→形幹	執着しない
    	←〜頭＋過分幹	妨げられない
    	名中幹	知識
    	名中幹	示す
    	名男幹	力
    	名中幹	誤りない知力
    	形幹	特別の
    	名中幹＋名男幹	感覚器官の力
    	名女幹	悟り
    	名中幹	要素、部分
    	名中幹	瞑想
    	名男幹	解脱
    	名男幹	深い瞑想

    
    日本語訳…… (如来たちは)執着せず、妨げられず、知識を示す力を持ち、 誤りない知力を持ち、特別の感覚器官の力を持ち、 悟りの要素をもち、瞑想し、解脱し、
    備考…… Ｋ訳「如来知見、広大深遠、無量、無礙力、無所畏、禅定、解脱」に相当。
    最後のは次にまわした。
    この部分は前文の(如来たち)が主語とする長大な述語。 この複合語の末尾は次文の(備えた)なので、 全体としては「如来たちは〜を備えている」という意味になる。
    
    
12. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名女幹	達成
    	形幹	稀有の
    	名男幹	教え、法
    	←過分男複主	備える
    	形幹＋名男幹	種々の教え(法)
    	名中→形男複主	開示
    	頭	偉大な
    	形幹	奇異な
    	形幹	稀有な
    	←過分男複主	得られた
    	名男単呼	(人名)よ
    	名男複主	如来たちは

    
    日本語訳…… (如来たちは)深い瞑想を達成し、稀有の教えを備えている。 そして種々の教えを開示するのである。 シャーリプトラよ、 [正しく目覚めた阿羅漢である]如来たちは偉大なる奇異で稀有なものを得たのである。
    備考…… 上の訳の[]部は次文の内容。
    Ｋ訳の「三昧、深入無際、成就一切、未曾有法、舎利弗、如来能種種分別、 巧説諸法、言辞柔軟、悦可衆心」に相当。 Ｋ訳はかなりの超訳である。