注意すべき内連声

●内連声(語形変化などに伴う語の内部での発音変化)は、通常の場合、語形変化表がもうそれをふまえた形になっているので、 規則としては特に覚えておく必要はありません。 しかし、以下に述べる規則はひんぱんに登場するうえ、多くの参考書ではこれらの変化をする場合を別立てしていない(当サイトではできる限り別立てしている)ので、 これらの法則を知らずに機械的に語形変化表をあてはめても正しい結果が得られません。そんなわけでぜひ知っておいてください。
 なお、これ以外の内連声規則については、文法概説-内連声をみてください。

A.語中のnがṇに変化する場合



r
途中に以下の音が入らない
c,ch,j,jh,ñ
ṭ,ṭh,ḍ,ḍh,ṇ
t,th,d,dh,n
ś,s
n

次に以下の音が来る
母音
n
m
y
v
つまり、rなどのそり舌音の影響でnがそり舌音化してṇになるというわけなのですが、 影響を与える r などが直前とは限らず同一語内ならかなり前にあってもかまわない、 その一方で途中にこれこれの音が来てはダメ、 というのがこの規則をわかりづらくしています。一応理屈をつけると…
 まず、影響を与える ṛ ,ṝ,r,ṣはそり舌音であり、しかも ṭ …などのような破裂音ではないのでそのそり舌の状態が継続します。 そこでnを発音するときにそり舌でṇとなるわけです。 ただし、途中にそのそり舌状態を解除するような音が来てしまうとダメ……と考えればこの規則を理解しやすいのではないでしょうか。
 なお、辻文法や菅沼文法では、「途中に以下の音が入らない」ではなく「途中に介在を許される音」という説明のしかたをしていますが、経験的にいって、「これが来てもかまわない」ではなく「これが来てはダメ」のほうが判定がしやすいと思います。

B.語中のsがṣに変化する場合

aā以外の母音
k
r
(l)
途中に入ってもよい

s

次に以下の音が
来ていない


r
クシャトリヤ」「ハルシャ・ヴァルダナ」のように、 どうもインドの地名人名などは「クシ」「ルシ」という連続が多いと思ったら、 このように、kやrのあとのsはṣに変わるという法則があったのです。 また、「ヴィシュヌ」のように、a系以外の母音のあとのsもṣになるのです。 この規則はAのように理論で覚えるというより、 このように具体的な地名人名を思い出して、 ははーんなるほどと納得するのがいいのではないでしょうか。 名詞・形容詞の変化ではsで始まる語尾が複数処格語尾しかなく、 子音で終わる語以外は、 変化表のなかでしっかりこの規則が適用されてしまっているので特に意識する必要はありません。 しかし動詞の活用ではひんぱんに登場するので注意が必要です。

C.母音の衝突

 主に母音語尾が接続するとき、語幹末の母音が次のような変化をします。
母音変化後
i,īiy
u,ūuv
eay
aiāy
oav
auāv
 要するに母音連続を避けて半母音を挿入するというわけです。 名詞・形容詞の変化では、変化表として覚えてしまうので特に意識しませんが、 動詞の変化ではかなり意識することになると思います。