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ビギナーの勉強法

Since 2005/6/28 Last Updated 2006/7/29


 当サイトには参考書の紹介ページがあり、かなり主観をまじえて紹介しているので、これを読めばどれがおすすめの本かはわかると思いますが、文章量が多いので、入門者にとっては必ずしも読みやすくはありません。「初心者なんだからごちゃごちゃ言われてもわからないよ」という、お急ぎのビギナーのために、「まずは何から手をつけるか」を、次のレベルへのステップアップまでを含めて書いておきます。本来こういうのは人それぞれなのでしょうが、あえて単純化して書いてみます。


  1. サンスクリット(ビギナー)
    そろえるべきもの(をクリックすると参考書ページの解説を表示します)
    1. J.ゴンダ『サンスクリット語初等文法』(ゴンダ文法)
    2. 菅沼晃『新・サンスクリットの基礎』(菅沼文法)
    3. 平岡昇修『初心者のためのサンスクリット辞典』
     なんだかんだ言って、ゴンダ文法で勉強するのが一番いいでしょう。理由は長くなるので、雑感集の「ゴンダ文法」を見てください。
     ただしゴンダ文法には独習書としては重大な問題点が2つあります。
    1. 説明が簡潔すぎ、訳語が悪文。
    2. 練習題の答えがない。
     教師や助言者が近くにいるならこの2つはたいした問題にはなりませんが、独習者にとってはかなりのハードルになるでしょう。
     練習題の答えは、以前は当サイトで掲載しておりましたが、諸事情あって掲載を休止しております。そのかわり、当サイトの会員制組織「まんどぅーか友の会」で、ゴンダ文法のネット勉強会を開いておりますので、ぜひ入会をご検討ください。→入会案内ページ
     説明がわかりにくい点を補うために、菅沼文法を用意してください。辻文法は次の「ステップアップ」で使いますが、お金に余裕があれば最初からそろえていても結構です。ゴンダ文法の説明でよくわからない部分はこれを見てください。お金に余裕のない人は、当サイトの「文法概説」も活用していただけるとうれしいです。
     ゴンダ文法の使い方は次のとおりです。
    1. 音論までをざっと通読する。どこに何が書いてあったかだけを覚える。
    2. 練習題の各問題の下に進度が書いてあるので、そこまでを読んだら練習題をやる。
     まずは最初の音論のところをざっと通読します(冒頭のデーヴァナーガリーの部分は不要。文字は練習題を全部終えるころに覚え始めれば十分)。理解できなくてもかまいません。覚えようとしなくても結構です。ただし、どこに何が書いてあったかだけは覚えましょう。後で疑問が生じたらすぐに調べられるようにするためです。また、菅沼文法(または当サイトの「文法概説」)ではどこにどう書いてあるかも対照しておきましょう。
     あとはひたすら練習題をやります。各練習題には進度が書いてあります。たとえば最初のIならばセクション21と書いてあるので、本文のセクション21(たまたまページも21ページ!)ので終わる男性名詞と中性名詞の変化表を対照させながらやっていきます。
     練習題のやり方は、単に和訳するだけでなく、それぞれの語について、連声(サンディ)の前の形は何か、それは何という語の何という形かという文法情報をメモするようにし、それを解答例と対照して答え合わせをします。具体的には、当サイトの「文法概説」の「演習1」の説明を見てください。
     ビギナーのあいだは辞書は不要です。練習題を解くには、ゴンダ文法巻末の語彙集や、当サイトの語彙集を使ってください。
     どうしても辞書が必要ならば、平岡昇修『初心者のためのサンスクリット辞典』が安価なのでいいです。が、ゴンダの練習題を解くならやっぱりゴンダ巻末の語彙集のほうが練習題に即していていいんで、この本の語彙集の部分はあまり使わないかもしれません。むしろこの本は、「逆引きサンディ索引」や「動詞活用辞典」の章が非常に役に立つことでしょう。初心者のあいだはゴンダの練習題を解くにしても、サンディされた形からもとの形を見出したり、動詞の現在語幹などから語根を見出したりするのにやたら時間がかかり苦労します。「そういう苦労こそが学力につながるのだ」という意見もありますが、私はむしろ、こういう便利な索引を使ってパッパッと答えを出していったほうが学力につながるように思います。なにしろ私がそうでしたから。私が勉強したときにはこの本は出ていなかったので、Roderick S. Bucknell : Sanskrit Manualを用いました。英語が得意ならばこの本を用いてもいいでしょう。



  2. サンスクリット(ステップアップ)
    そろえるべきもの(をクリックすると参考書ページの解説を表示します)
    1. 辻直四郎『サンスクリット文法』(辻文法)
    2. W. D. Whitney : A Sanskrit Grammar(ホイットニー)
    3. C. R. Lanman : A Sanskrit Reader(ランマン)
    4. Monier-Williams : A Sanskrit-English Dictionary(モニエル)
    5. 荻原雲来『梵和大辞典』(荻原梵和)
     ゴンダ文法の練習題が終わったら、引き続き選文をやってみるといいでしょう。答えあわせには当サイトの「リーディング」をご活用ください。この段階ではまだ辞書は不要です。
     ゴンダ文法を補う文法書は、引き続き菅沼文法を使っていいのですが、そろそろ辻文法を活用できる実力がついていると思うので、できる限り辻文法を買うようにしてください。
     ゴンダ文法の選文が終わったら、昔から定評のあるランマンのリーダーをやってみましょう。また、このリーダーはホイットニーの文典を参照しているので、できればそれも購入しましょう。どちらもインドのリプリントがあるので安く入手できます。
     ランマンに手を出すレベルになったら辞書も使えるようになります。荻原梵和はいろいろ問題のある辞書だし、だいいち高く、そろそろ入手困難になっているかもしれません。が、やはり日本語の訳語が載っている点は捨てがたいので、仏教系書店で入手できるようなら入手することをおすすめします。一般にはモニエルを必ず購入します(荻原梵和を買った人もモニエルは必須)。



  3. ウルドゥー語(ビギナー、ステップアップ)
    そろえるべきもの(をクリックすると参考書ページの解説を表示します)
    1. 鈴木斌『基礎ウルドゥー語』
    2. David Matthews and Mohamed Kasim Dalvi : urdu. teach yourself books(TY)
    3. 鈴木斌、ムハンマド・ライース・アラヴィー『実用ウルドゥー語会話』
    4. Richard Delacy : Beginner's URDU script. teach yourself books
    5. InPage
    6. 鈴木斌、麻田豊編『ウルドゥー語常用6000語』
     まずは1.『基礎ウルドゥー語』をそろえましょう。
     しかし『基礎ウルドゥー語』はあくまで副教材。主教材には向きません。その理由は上のリンクに書いてます。これは私だけの意見ではなく、当サイトの読者からいただいたメールでも数多くの人が言ってます。文法からのアプローチというのは、ウルドゥー語の学習には向いてないのかもしれません。
     英語で説明した本でもかまわないのであれば、文句なく2.のTY。もちろんCD(またはカセット)つきで購入して、頭からどんどん覚えていく。そして文法上の疑問を、日本語で説明された『基礎ウルドゥー語』で確認する、というやり方がおすすめです。
    英語は苦手だがTYで勉強してみたい、内容を知りたい、という人は、まんどぅーか友の会への入会をご検討ください。いいことがあるかもしれません。
     どうしても英語の本はイヤだというなら、TYの代用として3.『実用ウルドゥー語会話』を用いてください。もちろんカセットも買い、頭からどんどん覚え、文法上の疑問を『基礎ウルドゥー語』で確認するのです。
     『基礎ウルドゥー語』はこのような副教材として使うので、カセットは買わなくてもかまいません。
     文法上の疑問は『基礎ウルドゥー語』で調べるとして、語彙上の疑問は6.の『ウルドゥー語常用6000語』を使いましょう。一般に、ビギナーのうちは辞書は不要なのですが、日本ではウルドゥー語のてごろな辞書が存在しないのと、上記のように一番のおすすめ教材が英語だというハードルを克服するため、辞書の代用として6.はビギナーのうちから持っていたほうがいいでしょう。その後にちゃんとした辞書が必要なら、辞書ページで紹介した20th centuryなどを購入してください。
     ウルドゥー語はなんといっても文字のハードルがあります。アラビア文字の、しかもナスターリーク体(行書体)。最初はナスフ体(楷書体)から入ってもかまいませんが、いずれは必ずナスターリーク体を読めるようにならねばなりません。そのためには4.が必須。これを買って自分の手を使って書く練習をすること。これは「英語はイヤ」と言ってられません。なにしろ日本語で書かれた参考書は一つとしてナスターリーク体を使っていないのに、現実にはナスターリーク体しか使われていないのですから。TY(上記2.)はナスターリーク体ですが、書く練習のページが少ないので、TYで勉強した人も必須です。
     そして、ナスターリーク体に親しむためには、自分のパソコンでもナスターリーク体を使えるようにするのがいいので、5.のソフトを通販で購入してください。もちろんWindowsパソコンも必要ですよ。

     TYなり『実用ウルドゥー語会話』なりを終えたら、あとは各自のニーズに応じていろいろなことをやってください。
     会話ならパキスタン人の知り合いを作ってどんどん実践すればいい。いっそパキスタンに飛んでしまいましょう。
     聞き取りにはNHKのラジオ日本がおすすめ。短波ラジオがなくてもネット上で鮮明な音声で聞けるようになったのだからありがたい世の中です。ニュースの内容は日本のものですが、最初のうちはそのほうが練習になるかもしれません。あとは、ネット上のラジオ放送をいろいろ探せばいいでしょう。
     今のパキスタンは映画がふるってないので、映画を教材にしたいならヒンディー映画を代用にするしかありませんが、ドラマのビデオはハラルフード屋にいろいろあるのでそれを使うこともできるでしょう。
     読解は、日本語でも読解教材がいろいろ出てますのでそれを使えばいいですし、なんならパキスタンの新聞、雑誌を定期購読すればいい。いや、定期購読せずとも今はネットで足りてしまいます。ネットの普及は語学の勉強に計り知れない益をもたらしました。



  4. ヒンディー語(ビギナー、ステップアップ)
    そろえるべきもの(をクリックすると参考書ページの解説を表示します)
    1. 町田和彦『ニューエクスプレス ヒンディー語』
    2. R.S.McGregor : Oxford Hindi-English Dictionary
    3. 町田和彦編『ヒンディー語研修テキスト』(語彙集)
    4. James W.Stone & Roshna M.Kapadia : Hindi Newspaper Reader
     最近はヒンディー語の入門教材が日本でいろいろ出されたので、どれがいいかちょっと迷います(ウルドゥー語には無い悩み!)。しかもそのほとんどがCDつきで安価(ウルドゥー語からするとうらやましい!)。
     が、なんだかんだいってニューエクスプレスが一番標準的でクセがなく、内容も多すぎず少なすぎず、とっつきやすいと思います。。まずはこれを全部覚えちゃうことです。文法の説明も基本的な部分はこの本で尽くされているので別の本を買う必要はありません。
     しかし、ヒンディー語の場合、これを終えて次をどうするか、というところでハタと困ります。入門書が多いぶん、その次のレベルの本や辞書がないのが残念です。
     辞書は大学書林の『ヒンディー語小辞典』や、大修館書店の『ヒンディー語=日本語辞典』が一応あるにはありますが、高価すぎるのが難点です。一般にはOxfordのヒン−英辞典を使いましょう(『ヒンディー語小辞典』を買った人も必須)。上のリンクにも書きましたが、インド版が安いのでインド版を買いましょう。
     また、やはり訳語が日本語のものがほしいので、WEB上で公開されている、AA研のヒンディー語研修のテキストの語彙集をぜひダウンロードして全ページ印刷して、ヒン−日辞典の代用にしましょう。けっこうな量になりますが、無料で語彙集が手に入るのですからありがたいものです。
     読解教材はHindi Newspaper Readerが最高です。リーディング教材というと子供向けの読み物や文学作品に偏りがちですが、大の大人は新聞記事から入るのが一番ラクだし興味が持続することでしょう。これを全部こなせばヒンディー語の新聞・雑誌はすらすら読めるようになります。残念ながら絶版。各種検索エンジンで検索して、通販で扱ってる業者を探してみてください。またはまんどぅーか友の会への入会をお勧めします。
     あとは、上記ウルドゥー語とまったく同じ話になります(よって、はしょります)。会話はインド人の知り合いを作りましょう。聞き取りにはNHKのラジオ日本がおすすめ。ヒンディー映画のビデオはいっぱいあり、特にDVDには日本語字幕のついたものもあるので利用しましょう。DVDには最低でも英語字幕が必ずついていますので語学の勉強には便利です。読解はネット上に素材がごろごろ。
     ウルドゥー語と違って特別な専用ソフトがなくてもWindows XPとOffice2003さえあればヒンディー語の使用には困りませんので、パソコンも積極的に使いましょう。



  5. パーリ語(ビギナー、ステップアップ)
     ともかくパーリ語についてはビギナーのための参考書が全然ないのが難点です。たぶん多くの大学では、講師がみんなプリントを自作しているんじゃないでしょうか。そんなわけで手前味噌になりますが、パーリ語ページの「パーリ語入門」をご活用くださいませ。
     それが終わってどうするかは、「パーリ語入門」の第30章「今後の勉強法」に書いたのでこちらは割愛します。




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