[ウルドゥー語/ヒンディー語ページトピックス]

ありがとう


 「あいさつについて」で説明したように、「ありがとう」を濫発する習慣はヨーロッパ、とくにイギリス人のものです。近代にヨーロッパ人が世界を征服した結果、一応全世界にこの習慣は広まったようですが、地域によってはまだまだ定着していないところがあります。その中の一つがインドということがいえましょう。
 特に、ヒンディー語の「ありがとう」とされる言葉は、これは英語のサンキューの訳語として無理にサンスクリット由来の言葉をあてはめたものであり、全く定着していません。比喩的にいえば「恐悦至極にござりまする」みたいに聞こえるらしいです。いろいろな本を読むと、「と書かれた看板を見て、どこかの地名と誤解した話」「日本人留学生が同宿のインド人にを濫発していたら、『もうと言わないで』と怒られた話」など、この語がいかに定着していないかを示すエピソードには事欠きません。まぁこんな言葉は使わないことです。
 どうしても「ありがとう」といいたければ、外国人だという立場を明確にして、ウルドゥー語/ヒンディー語を使わないことです。英語でThank you.と言いましょう。もっともインド英語では(タンキュー)のような発音になります。冒頭のthは露骨に反舌音にしましょう。えっ、英語をまぜるなんて邪道だって? そんなことはありません。お隣のペルシア語で「ありがとう」はメルシーといいます。もちろんフランス語からの外来語です。たぶんペルシア語でもよっぽどのことでないと「ありがとう」と言わなかったので、こういうヨーロッパの表現が入り込んで来ちゃったのでしょう。そのうちウルドゥー語/ヒンディー語の辞書にもタンキューが載るようになるかもしれません。
 外国で作られた入門書、とくにイギリスで作られたteach yourselfなどでは、英語の習慣にひきずられて「ありがとう」にあたる言葉を濫発している場合があるので注意してください。

 ウルドゥー語の「ありがとう」はです。こちらのほうはまだ濫発しても問題ないかもしれません。ヒンディー語でも使います。もともとイスラム教徒の言葉ですが、イスラム教徒以外が使っても問題ないようです。
 また、(親切、好意。女性名詞)というペルシア語系語彙は、ペルシア語ではあいさつとして「ありがとう」という意味でも使います。この用法はウルドゥー語/ヒンディー語でも使えます。

 発想をかえて、で代用するという手もあります。この語は「よい」という形容詞ですが、英語のwell同様に、「よし、いいぞ、さて」など、さまざまな局面の間投詞としても使います。これを感謝の局面にも使うわけです。人から何かしてもらって「よし」とあなたが喜んでいえば、相手にはそれが感謝の気持ちとして伝わることでしょう。
●関連項目
あいさつについて
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