1-4 内連声
II.一語の中の音変化
- 造語、名詞・形容詞の格変化、動詞の活用などのとき、
語尾を加えるために音変化をすることがあります。
このときの規則は主として
外連声(1)、
外連声(2)を適用するのですが、
いくつか異なる点があります。
以下の各項でそれらを説明します。
- 単音節の名詞や、時として動詞の語根や語幹の
、、、は、
母音で始まる語尾の前では、に変わります。
これらが子音の直後にあるときは特にそうなります。
例。
+=
(怖れて)。
+=
(地の上に)。
+=
(私は生む)。
+=
(彼らはできる)。
+=
(彼らは賞賛した)。
++=
(私はさとるだろう)。
- 語根の、の直前の、は、
その語根の直後にや子音が来るときは、
たいてい長母音化します。
例。
+=
(言葉によって)。
+=
(彼は賭博をする)。
+=
(→16)(くびきは)。
32によって語根に属する
がとなったときもこれに準じます。
例。
+=
(希望によって)。
しかし、
(神聖な)、
(牽く獣)などのような例外もあります。
- 語根の末尾のは、
後続する語尾などの直前ではおおむねになり、
唇音の直後にあるときはになります。
例。
(散乱する)→
(能直現単3)。
(散らす)→
(過分)。
(満たす)→
(受直現単3)。
- 、、、は、
母音やで始まる語尾などの直前では、
、、、となります。
例。
+=
(眼)。
+=
(征服されるべき)。
+=
(唱える者)。
+=
(牝牛にて)。
+=
(牝牛の)。
+=
(船の中)。
- 語根や語幹の末尾の子音は、
母音や半母音や鼻音で始まる語尾などの直前ではおおむね変化しません。
その他の語尾の直前では、16以後の外連声の規則が適用されます。
例。
+=
(風に)。
+=
(言われるべき)。
→
(私は言う)。しかし、
+=
(→21)
(風(複数)に)。
- 語根のがの直前に来るときは、
になるものとになるものとがあります
(→18の備考と
21)。
例。
+=
(つながれた)。
+=
(造られた)。
- 語尾の最初のおよびは、
有声有気音の直後ではになり、
逆に直前にあった有声有気音が有声無気音になります。
例。
+=
(得られた)。
+=
(あなたたち二人は拒む)。
- 歯音は反舌音の直後では通常は反舌音化します。
例。
+=
(欲した)。
+=
(→18、
21)
(憎め)。
+=
(彼は称賛する)。しかし、
(6において)。
- はまたはの直後ではになります。
例。
+=
(懇願)。
+=
(犠牲)。
語末のや
は、子音で始まる語尾にアクセントがある場合は消滅します。
例。
(撃つ)→
(過分)。
(行く)→
(過分)。
しかし語根にアクセントがある場合はは残り、
は子音およびの直前ではに変化します。
例。
(撃つ)→
(不定法)。
(行く)→
(不定法)、
(過能分)。
歯擦音(系統の音)の直前では、
も
もアヌスヴァーラになります。
例。
(思う)→
(反未単3)。
(忍ぶ)→
(反未単3)。
備考 この規則は厳守されないこともあります。
- 語中のは母音または
、、、、が後続し、
、、、が前方にあって、
途中に母音、喉音、唇音、
、、、以外の子音が来ないときには反舌音
になります。
例。
+=
(原因)。
+=
(信仰ある)。
(神の名)→
(単数属格)。
+=
(彼は取る)。
備考 接頭語
やたいていのを含む語根に、接頭語
、、、がつくと、そのはになります。
例。
++=
(彼は落ちる)。
+=
(決定された)。
+=
(彼は屈する)。
- はの直前ではになります
(も副作用でになります)。
例。
+=
(見られた)。
これ以外の子音の直前のとは、
18に従います。
またはと同様に変化します。
例。
(見る)→
(反直言単3)、
(反過単3)。
- 語中のは、、または、、以外の母音が直前にあるとき
(ヴィサルガとアヌスヴァーラのみは途中に入ってもいい)、
直後にやがこない限り、に変化します。
例。
(弓)→
(単数属格)、
(複数主格)、
(複数処格)、
。
(語る)+は、
(→18)+
を経て
(彼は語るだろう)となります。
(語)+=
(→37)
(語中に)。しかし、
(光)の主格単数は
(→20)。複数為格は
(→32)。
備考1 語末がまたはでおわるものにで始まる語尾などがつくときも、
たいていに変化します。
+=
(灌頂(王の即位時に水を注ぎかけること))。
+=
(完成された)。
+=
(彼は座る)。しかし、
+=
(彼は思い出す)。
+=
(驚いた)などの例外があります。
備考2 語根
(立つ)と
()(支える)の語頭のは、
接頭辞
(→233)の直後にあるときには消滅します。
+=
(立つように)。
+=
(支えられた)。
161参照。
備考3 語根に属する
の直後で語末にある
は、
で始まる語尾などの直前では変化しませんが、
有声子音で始まる語尾の直前では(語源的にはzに変化した後)消滅します。
(座る)+=
(あなたは座る)。
+=
(あなたたちは座る)。
(命じる)+=
(命ぜよ)。
- は常に古代の有声有気音に還元されます。
(燃える)の古語はなので、(熱)のようになります。
本来がである
は、
無声子音またはで始まる語尾の直前ではであるかのように処理されます。
本来が口蓋有声有気音
()である
は、
、、で始まる語尾の直前では反舌音
(。
→46)に変化し、
、、をすべてに変化させ、
さらに直前の母音を長母音化して自分自身は消滅します。
それ以外の語尾の直前では、
このは本来
であったものと同様の変化をします。
例。
(乳をしぼる)は本来
だったので、
(よく乳が出る)。また、
+=
(過分)
(→42)。
(なめる)は本来
だったので、
その過去分詞は
+=
。
しかしどちらも、能直現単1は
、。単2は
(→19)、
となります。
備考1 この区分は必ずしもはっきりしておらず、
ときどき混交することがあります。
(小便をする)の古代の形に、
があり、また、
(雲)という語がありますが、
の過去分詞は
ではなく
です。また、
(迷う)の過去分詞には、
(可憐な)と
(愚鈍な)の2種類の形があります。
備考2 (結ぶ)の古代の形はなので、
不定法は
+=
。過去分詞は
です。
(運ぶ)の不定法は
。
(堪える)の不定法は
。
(生長する)の不定法は
、過去分詞は
です。
まんどぅーかのコメント
- 初心者はとりあえず内連声を気にする必要はありません。
内連声の結果は語形変化表や現実の語形にすでに反映されているので、
それらを覚えてしまえば特に意識する必要がないからです。
ある程度学習が進んだあとに改めて振り返ると、
「ああ、そういうことだったのか」と納得するところでしょう。
よって、このページは読み飛ばして結構です。
ただ、との反舌音化の法則
(45、
47)
は比較的よく出てくるので、
知っておいたほうがいいでしょう。
どちらも非常にわかりにくいので、
当サイトの連声規則(作文編)を参照してください。