ジャータカ6(2/6)
青鷺の本生物語

そこで彼はこういう考えを持った。「さあ、私はかの市民をだまそう」と。とても意にかなう布の衣を作って真っ赤に染めて、それを着てジェータヴァナへ行った。他の男(ジェータヴァナの裁縫師)が彼を見て貪欲を起こして「尊師よ、この衣はあなたが作ったのですか」と質問した。
(他の村の裁縫師)「はい、友よ」と。
(ジェータヴァナの裁縫師)「尊者よ、この衣を私にください。あなたは他のものを手に入れるでしょう」と。
(他の村の裁縫師)「友よ、私たちは村に住んでいて必需品が得がたいのです。私がこれらを与えて、私は何を着るのですか」と。
(ジェータヴァナの裁縫師)「友よ、私のところには傷のない布がある。それを持っていってあなた方の衣を作れ」と。
(他の村の裁縫師)「友よ、私はここに手仕事を示した(この衣は私が手をかけて作ったものだ)。しかしあなたがこのように言うなら、どうしようもありません。それを取りなさい」と。
彼の布の衣を与えて傷のない布を取って、彼をだまして出発した。ジェータヴァナに住んでいる裁縫師もまた、その衣を着て二三日した後、湯で洗っているうちにぼろ布の本性を見て恥じた。「村に住む裁縫師によってジェータヴァナに住む裁縫師がだまされたらしい」という、彼のだまされた事実が教団中に知れ渡ることとなった。
さてある日、乞食修行者たちがその話をしながら教えの場に着席した。世尊がいらして「乞食修行者たちよ、今ここで何の話のために共に座っているのか」とたずねた。彼らはその理由を述べた。世尊は「乞食修行者たちよ、ジェータヴァナに住む裁縫師は今だけ他人をだましているのではない。以前にもやはりだましたのだ。また、今だけ村に住む人によってこのジェータヴァナの裁縫師がだまされたのではない。以前にもまただまされたのだ」と言って、過去の話を取り上げられた。

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