ジャータカ6(1/6)
青鷺の本生物語

「欺瞞の智慧に満ちた者は結局は〜ない」という詩を含むこの話は、師匠(世尊)がジェータヴァナ(祇園精舎)において、裁縫師をしている乞食修行者について語ったものである。

ジェータヴァナに住むある乞食修行者が、そこ(ジェータヴァナ)で、衣に関してなされるべきどんな仕事をも、つまり裁断や縫合や採寸や裁縫などの仕事に対してとても巧みであったそうだ。彼はその巧みなわざで、まさに「裁縫師」として知られていた。
さて、この男は何をするか?というと、ぼろきれに手作業をほどこして非常に肌触りのよい気持ちのよい衣を作って、染料を使い切った粉末を水にとかしたもので染めて、ほら貝によってこすって、美しい快適な衣を作って、それでおしまいにする。衣の仕事を知らない乞食修行者たちが傷のない布を持って彼の近くに来て、「私たちは衣の作り方を知りません。私たちに衣を作ってください」と言った。彼は「友よ、衣は長い間かかって作られ完成する(のですぐにはできない)。(が、いまここに)私が作った衣がある」「これらの(あなたがたの持ってきた)布を置いて、それ(私の作った)衣を取って行け」と、(彼の作った)衣を取り出して見せる。彼らはその衣の外見の優秀さだけを見て「しっかりしている」と認識し、傷のない布を裁縫師に与えて、それ(裁縫師の作った衣)を取って行く。その衣がわずかに汚れた時に、彼らによってお湯で洗われて自己の本来の性質を示す。あちこちにぼろの状態が現れる。彼らは後悔した。
このように、来る人来る人を布によってだましているかの乞食修行者は、あらゆるところで知れ渡ることとなった。そして、この男がジェータヴァナでしているように、他の村でも、ある裁縫師が世間を欺いていた。彼の親しい乞食修行者たちは「尊者よ、ある裁縫師がジェータヴァナで同様に世間を欺いているそうだ」と告げた。

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