マハーバーラタ 3-50-1

ナラ王物語1-1/3
デーヴァナーガリーはランマンのリーダーのものをそのまま使用。
入門用に過剰な分かち書きをしているので注意。
1,2以外すべて韻文、ブルハダシュヴァのセリフなので、[詩]表記および(ブルハダシュヴァ)「」表記を略。

1. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	接	さて
   	名男幹	(人名)
   	名中単主	物語

   
   日本語訳…… ナラの物語
   備考…… はこのように書物の最初に用いられることが多い。無理に訳せば「さてここに〜が始まる」というところだろうか。
   
   
2. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	名男単主	(人名)は
   	能完単３	言った

   
   日本語訳…… ブルハダシュヴァは言った。
   備考……
   
   
3. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	能過単３	あった
   	名男単主	王
   	名男単主	(人名)
   	名中単主	名前
   	名男幹	(人名)
   	名男単主	息子
   	形男単主	強い

   
   日本語訳…… ヴィーラセーナの息子で、ナラという名の、強い王がいました。
   備考……
   
   
4. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	(←)過分男単主	[具]を所有した
   	名男複具	徳
   	(←)形男複具	好ましい
   	形男単主	美貌の
   	名男幹	馬
   	形男単主	[幹]に巧みな

   
   日本語訳…… 好ましい徳を持ち、美貌で、馬にたくみでありました。
   備考……
   
   
5. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	能過単３	〜であった
   	名男幹	人間
   	名男複属	王
   	名男単処	筆頭に
   	名男幹	神
   	名男単主	主
   	接	〜のごとく

   
   日本語訳…… (美貌については)まるで神の主(インドラ)のように、人間の主(王)たちの絶頂でありました。
   備考…… 「インドラのよう」というのは、美貌についていう決まり文句。
   
   
6. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	前	[属]をしのいで
   	形(→名)男複属	すべての(人)
   	名男単主	太陽
   	接	〜のように
   	名中単具	輝きによって

   
   日本語訳…… 輝きについては、太陽のように、すべての人をしのいでおりました。
   備考…… 最後のは、「〜によって」という直訳でも理解可能だが、「関係の具格」で「〜については」と訳す。
   
   
7. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	形男単主	バラモンを敬う
   	名男幹	ヴェーダ
   	形男単主	〜を知っている
   	名男単主	勇士
   	名男複処	国名
   	名男単主	王

   
   日本語訳…… バラモンを敬い、ヴェーダを知っている勇士にして、ニシャダ国の王でありました。
   備考……
   
   
8. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	名男幹	さいころ
   	形男単主	〜を好む
   	名中幹	真実
   	形男単主	〜を語る
   	形男単主	偉大な
   	名女幹	完全な軍隊
   	名男単主	主

   
   日本語訳…… さいころ賭博を好み、真実を語る、偉大な大将軍でありました。
   備考……
   
   
9. 
   
   
   

   語(連声前)	説明	語義
   	←←過分男単主	[属]の憧れの的
   	名男幹	男
   	名女複属	女たちの
   	形男単主	気高い
   	←過分幹	抑制された
   	名中→形男単主	感覚

   
   日本語訳…… 男たち女たちの憧れの的であり、気高い、感覚の抑制された者であり、
   備考……
   
   
10. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名男単主	保護者
    	形→名男複属	弓で武装した者たちの
    	形男単主	最高の
    	副	まるで
    	接	〜のごとく
    	名男単主	マヌ
    	副	みずから

    
    日本語訳…… 弓で武装した武人たちの最高の保護者であり、さながらマヌその人のようでありました。
    備考……
    
    
11. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	副	同様に
    	副	まさに
    	能過単３	あった
    	名男複処	(国名)に
    	名男単主	(人名)
    	形幹	恐るべき
    	名男→形男単主	剛勇

    
    日本語訳…… まったく同様に、ヴィダルバ国に、ビーマという、恐るべき剛勇を持つ者(王)がおりました。
    備考……
    
    
12. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名男単主	勇士
    	形幹	すべての
    	名男複具	徳(によって)
    	←過分男単主	[具]をそなえた
    	名女幹	嫡子
    	形男単主	〜を欲する
    	代男単主	彼は
    	接	そして
    	形男単主	嫡子がない

    
    日本語訳…… 彼は勇敢で、あらゆる徳を備え、子供がほしかったが子供がありませんでした。
    備考……
    
    
13. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	代男単主	彼は
    	名女幹	嫡子
    	副	〜を求めて
    	形男単対	最高の
    	名男単対	努力を
    	能過単３	した
    	頭	はなはだ
    	←過分男単主	専念した

    
    日本語訳…… 彼は子供を得るために、非常に専念して、最高の努力をしました。
    備考……
    
    
14. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	代男単対	彼(を)
    	能過単３	訪ねた
    	名中幹	バラモン
    	名男単主	聖仙が
    	名男単主	(人名)
    	名中単主	名前
    	名男単呼	バラタ王族よ

    
    日本語訳…… バラタ王の後裔である大王様、そのビーマ王をダマナという名のバラモンの聖仙が訪ねたのです。
    備考…… 最後のは、この話の語り手であるブルハダシュヴァが、聞き手であるユディシティラを呼んだもの。
    
    
15. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	代男単対	彼を
    	代男単主	かの
    	名男単主	(人名)は
    	名女幹	嫡子
    	形男単主	〜を欲する
    	←使完単３	満足させた
    	名男幹	道徳
    	形男単主	〜を知る

    
    日本語訳…… かの、子供がほしい有徳のビーマ王は、彼(ダマナ)を満足させました。
    備考…… 「満足させました」は、次を訳してから訳すほうがいい。
    
    
16. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名女単具	王妃
    	副	[具]とともに
    	名男幹	王
    	名男単呼	王よ
    	名男単具	厚遇によって
    	形男単対	威光に満ちた

    
    日本語訳…… 大王よ、(ビーマ王は)王妃とともに、威光に満ちたダマナを厚遇によって満足させました。
    備考…… 「大王」()はやはり聞き手であるユディシティラのこと。
    
    
17. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	代男単為	彼に
    	←過分男単主	好意を抱いた
    	名男単主	(人名)は
    	前	〜を伴った
    	名女→形男単為	妻
    	名男単対	望みのものを
    	能完単３	与えた

    
    日本語訳…… (厚遇に)好意を抱いたダマナは、ビーマ王と王妃に望みのものを与えました。
    備考…… 「妻を伴ったビーマ王に」は、「ビーマ王と王妃に」と意訳すべき。また、次句と一緒に「望みのもの、すなわち〜を与えた」という語順で訳すのがいいと思う。
    
    
18. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名女幹	少女
    	名中単対	宝石を
    	名男複対	少年たちを
    	接	そして
    	数男複対	３人の
    	形男複対	気高い
    	形幹	偉大な
    	名中→形男単主	威厳

    
    日本語訳…… 偉大な威厳を持つ者(ダマナ)は、宝石のような女の子と、３人の気高い男の子とを(ビーマ夫妻に与えました)。
    備考…… の位置に注意。A B のように、並列したものの最後にくるが、最後の成分がb1 b2 b3のように複数語からなるときは、b1 b2 b3のように、その第二番目の位置に割り込んでくる。ここでは最後の成分がのように３語からなるので、はの次に割り込んでいるのだが、そのおかげでこの３語が分断されてしまい、とがにかかっていることがわかりにくくなるので注意。 (偉大な威厳を持つ)はダマナのことなので、前句と一緒に訳すなら、ダマナにかけて、「厚遇に好意を抱いた、偉大な威厳を持つダマナは〜」とするとよい。
    
    
19. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名女単対	(人名)
    	名男単対	(人名)
    	名男単対	(人名)
    	名男単対	(人名)
    	接	そして
    	形男単対	輝きに満ちた

    
    日本語訳…… (女の子は)ダマヤンティーを、(男の子は)ダマ、ダーンタ、そして輝きに満ちたダマナを(与えました)。
    備考…… 最後の(輝きに満ちた)は、単数形なので、ダマナだけにかかっている。ちなみに、次の句にはいろいろ形容詞が出てくるが、それらは男性複数対格形なので、３人の男の子すべてにかかるわけである。
    子供たちの名前は、聖仙ダマナにちなんで、みんながついている。これらはすべて「他を馴らした者、屈服させた者」→「勝利者」というニュアンスをもつ。しかし最後のダマナは、この聖仙の名前とまるきり同じなのでまぎらわしい。
    
    
20. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	←過分男複対	[具]を付与された
    	名男複具	徳
    	形男複具	すべての
    	形男複対	恐るべき
    	形幹	恐るべき
    	名男→形男複対	剛勇

    
    日本語訳…… (３人の男の子は)すべての徳をもち、恐るべき剛勇を備えた者たちでありました。
    備考…… この句はすべて前句の３人の男の子にかかる形容詞なので、本来こちらから先に訳して「〜を備えた者たちであるダマ…を与えた」とするべきだが、わずらわしいので前句を先に訳して、いったん切ってからこちらを新たに訳したほうがいいかもしれない。なお、最後の２語は11にも出てきたシーケンスだが、11では最初のは固有名詞、こちらは形容詞である。まぎらわしい。
    
    
21. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名女単主	(人名)
    	接	しかし
    	名男単具	美貌によって
    	名中単具	輝きによって
    	名中単具	名声によって
    	名女単具	美によって

    
    日本語訳…… 一方、(美しい腰の女)ダマヤンティーは、美貌、輝き、名声、美(によって)
    備考…… (美しい腰の女)というのは次句に出てくる。
    具格名詞が４連発であるが、実は次句に具格の名詞+があるので５連発である。次句とまとめて訳すといい。
    
    
22. 
    
    
    

    語(連声前)	説明	語義
    	名中単具	幸運によって
    	接	そして
    	名男複処	世の人々において
    	名中単対	名声を
    	能完単３	得た
    	名女単主	美しい腰の女

    
    日本語訳…… そして幸運によって、世の人々の間で名声を得ました。
    備考…… 最後の「美しい腰の女」は、前句のダマヤンティーにかかる。「名声を得た、美しい腰の女である」と訳すと、あくまで定動詞であるがにかかっているかのように読めてしまうので避けた。「ダマヤンティーは、美しい腰の女であり、〜によって名声を得た」または「美しい腰の女であるダマヤンティーは、〜によって名声を得た」という順番ならＯＫ。