ヒトーパデーシャ1-2(4/4) - サンスクリット語(梵語)リーディング

語(連声前)	説明	語義
	間	あはは
	形幹	大きな
	名中単処	泥沼に
	←過分男単主	落ちた
	能現単２	あなたは～ある

日本語訳…… (虎)「あはは、あなたは大きな泥沼に落ちてしまったね」
備考……

語(連声前)	説明	語義
	副	今から
	代単対	あなたを
	←使能現単１	私は起こす

日本語訳…… (虎)「今から私はあなたを起こしてあげましょう」
備考……

語(連声前)	説明	語義
	接	～と
	絶	言って
×２	副	徐々に
	絶	近づいて
	代男単具	かの
	名男単具	虎によって
	←過分男単主	保持された
	代男単主	かの
	名男単主	旅人は
	能過単３	考えた

日本語訳…… こう言われ、徐々に近づかれ、かの虎につかまえられたかの旅人は考えた。
備考…… 絶対詞の前後は主語が同一であるはずだが、「こう言って、徐々に近づいて」と訳すと主語が同一でなくなる。絶対詞は「～して」だけでなく「～されて」の意味もあるので、上記のように訳すと主語が同一となる。

[詩]

語(連声前)	説明	語義
	副	ない
	名男幹	法
	名中単対	経典を
	能現単３	読む
	接	～と
	名中単主	原因
	副	ない
	接	また
	接	たとえ～ても
	名男幹	ヴェーダ聖典
	名中単主	読誦は
	形→名男単属	悪人にとって

日本語訳…… (旅人の引用する詩)「教えの経典を読んだということも、またたとえヴェーダ聖典を読んだとしても、それは悪人にとって(改心する)要因にはならない」
備考……

ここから旅人のセリフ(考え)だが、いきなり詩で始まるので、カギカッコのみならず二重カギカッコもここから始まるというわけである。
２つののあとに(である)を、また「悪人の原因」の間に「改心の」などの言葉を補う。

[詩]

語(連声前)	説明	語義
	名男単主	本性は
	副	まさに
	副	ここで
	副	そのように
	反現単３	卓越する
	接	～ように
	名女単具	本性によって
	形中単主	甘い
	名女複属	牛の
	名中単主	乳が

日本語訳…… (旅人の引用する詩)「牛の乳が本性によって甘いように、ここで(他のすべてに)まさに本性は卓越する」
備考…… この部分にランマンは as by nature cows milk is sweet.(牛の本性によって牛乳は甘い)という註をつけているが、「牛の食べる草には色々な味のものがあっても、牛乳は甘さを以てその本性とするから、草の味には影響されない。悪人の本性もこれと同じで、法典やヴェーダを学んでも変るものではない、との意」(金倉円照、北川秀則訳『ヒトーパデーシャ』p.268)という解釈をとりたい。

語(連声前)	説明	語義
	＋副＋接	さらにまた

日本語訳…… (旅人)「さらにまた」
備考……

[詩]

語(連声前)	説明	語義
	形幹	制御されない
	名中幹	感覚器官
	名中→形→名男複属	心を持つ人々にとって
	名男幹	象
	名中単主	沐浴
	接	あたかも～のように
	名女単主	努力は

日本語訳…… (旅人の引用する詩)「感覚器官と心を制御できない人々にとっては、努力はまるで象の沐浴のようなものである」
備考…… 「象の沐浴」についてランマンはよくわからなかったようで、しどろもどろの註をつけているが、金倉円照、北川秀則訳『ヒトーパデーシャ』p.268によれば「象には水浴の後で身体に泥を塗る習慣があるが、これでは折角の水浴も無意味である。これと同じく心を静めないでなす修行は、かえって身を汚すことになる、との意」とある。

[詩]

語(連声前)	説明	語義
	名女幹	醜女
	名中幹	装飾品
	形男単主	～に似た
	名中単主	知識
	名男単主	重荷は
	名女単対	努力
	前	[対]なしで

日本語訳…… (旅人の引用する詩)「努力のない知識は、まるで醜女の装飾品のように重荷である」
備考…… 主語は

、述語は

。性が一致していないが、両方とも名詞なのでいたし方ない。

語(連声前)	説明	語義
	代中単主	それは
	副	ない
	代単具	私によって
	形中単主	よい
	←過分→名中単主	こと
	代中単主	～ことは
	副	ここで
	形→名男単処	殺人を性とする者において
	名男単主	信頼が
	←過分男単主	なされた

日本語訳…… (旅人)「私がここで殺人を本性とする者に信頼をしたのはよいことではなかった」
備考……

語(連声前)	説明	語義
	副	そのように
	接	また
	←過分中単主	言われた

日本語訳…… (旅人)「またこのようにも言われている」
備考……

[詩]

語(連声前)	説明	語義
	形→名男複属	爪を持つ獣たち(の)
	接	そして
	名女複属	川(の)
	接	そして
	形→名男複属	角のある獣たち(の)
	名中幹	刀
←	名男→形→名男複属	手にもった者たち(の)

日本語訳…… (旅人の引用する詩)「爪を持った獣に、川に、角のある獣に、刀をもった者に」
備考……

すべて複数属格であるが、処格と同じ用法として、次句の「信頼をしてはならない」にかかる(次句の２語は処格が用いられている)。
「川」については一部の辞書に女性の比喩という説明もあるが、素直にそのままとるべきであろう。「うつろい流れゆく、頼りないもの」の象徴として川をあげるのは、論語の「逝く者はかくのごときか」、またそれをふまえた方丈記の「行く川の流れ…」など、広く見られる比喩であろう。
はであるはずのものが韻律の関係で変化したもの。なお、一見なる形容詞の変化のように見えるので、辞書によってはこの形を見出し語として挙げている場合がある。

[詩]

語(連声前)	説明	語義
	名男単主	信頼が
	副	ない
	副	まさに
	←動形男単主	なされるべき
	名女複処	女たちに
	名男幹	王
	名中→形→名男複処	家門の者たちに
	接	そして

日本語訳…… (旅人の引用する詩)「…女に、王族には信頼をしてはならない」
備考……

語(連声前)	説明	語義
	副	さらに
	接	また

日本語訳…… (旅人)「またさらに」
備考……

[詩]

語(連声前)	説明	語義
	形→名男単属	すべての者にとって
	副	まことに
	受現複３	検査される
	名男複主	本性が
	副	ない
	形男複主	他の
	名男複主	性質

日本語訳…… (旅人の引用する詩)「まことに、すべての者にとって、他の性質ではなく、本性が検査されるべきである」
備考……

[詩]

語(連声前)	説明	語義
	絶	優越して
	接	なぜなら
	名男複対	性質(を)
	形男複対	すべての
	名男単主	本性は
	名男単処	最高位で
	反現単３	存在する

日本語訳…… (旅人の引用する詩)「なぜなら本性は他のすべての性質に優越して最高位に存在するからである」
備考……

語(連声前)	説明	語義
	形中単主	他の
	接	また

日本語訳…… (旅人)「また他に」
備考……

[詩]

語(連声前)	説明	語義
	代男単主	かの
	接	なぜなら
	名男幹	天空
	形男単主	～を歩きまわる
	名中幹	暗黒
	名男幹	破壊
	形男単主	～をなす
	数幹	10
	数幹	100
	名男幹	光線
	形男単主	～を持つ
	名中複属	天体たち(を)
	名中幹	中央
	形男単主	～を動く

日本語訳…… (旅人の引用する詩)「なぜならば、かの、天空を動き回り、暗黒を破壊し、千の光線を持ち、天体の中を動く…」
備考…… ４つともすべて次句の「月」の形容。

[詩]

語(連声前)	説明	語義
	名男単主	月
	接	～でさえも
	名男	運命
	名男単従	～にしたがって
	反現単３	飲み込まれる
	名男単具	(悪魔の名)によって
	代男単主	あの
	←[%likh過分中単主	書かれたものは
	接	もまた
	名中単処	ひたいに
	←過分中単主	消された
	代男単主	誰が
	形男単主	ふさわしい

日本語訳…… (旅人の引用する詩)「かの月でさえも運命にしたがってラーフに飲み込まれるのであるから、ひたいに書かれたもの(運命)もまた誰が消すことができようか」
備考…… 乳海攪拌によってできた不死の薬アムリタを受け取る列に割り込んでちゃっかりとアムリタを受け取ってしまったアスラを太陽と月が告発し、ヴィシュヌがアスラを円盤で切ったのだが、アムリタの効力によって頭部がラーフ、胴部がケトゥとして生き残る。この２つは太陽と月への憎しみを忘れずに常に追いかけ、時々飲み込んでしまうので、日食や月食が起こるという神話に基づく表現。

語(連声前)	説明	語義
	接	～と
	←能現分男単主	考えている
	副	まさに
	代男単主	あの人は
	名男単具	虎に
	絶	保持されて
	←←使過分男単主	殺害された
	←過分男単主	食べられた
	接	そして

日本語訳…… まさにこう考えているときに、彼は虎につかまえられ殺されて食べられた。
備考……

ヒトーパデーシャ1-2 (4/4)