連声法
- 連声法(サンディ)とは
前語末と次語頭の音との接触によって音が変化することがあります。
単語同士の接触ばかりか、
複合語内の各語、接頭辞、接尾辞、語尾などの接触でも音が変化することがあります。
これを連声法(または連声。れんじょうと読みます)といいます。
パーリ語では(サンスクリットでも同様)



といい、
これがそのまま英語などに外来語として入り、
sandhi(サンディ)などと書かれ読まれています。
サンディに類する現象はどんな言語にもあり、
日本語では「音便」(読みて→読んで、など)と呼ばれていますが、
やはりサンディといえばサンスクリット、
サンスクリットといえばサンディというところです。
なにしろやたらにたくさんの規則があり、しかも厳密に法則化されています。
これに対してパーリ語のサンディは、
例によっていい加減な部分を多く含み、
同じ条件なのにさまざまな結果が生じたり、
そもそもサンディするかどうか自体が恣意的だったりします。
- 母音と母音の間の連声
一般的に母音が連続することを避ける傾向があり、
多くは合体して一つの母音になってしまいます。
特に複合語内ではほとんど合体します。
文の中の語どうしの場合は合体したりしなかったりまちまちです。
母音連続の避け方は以下のとおりです。
- どちらかの母音が省略される……ローマナイズの場合、省略された母音は’で表すのが普通です(スペースはツメる場合とツメない場合とあり)。
- 合体して長母音になる……あるいは、「どちらかの母音を省略し、他方の母音を長母音化する」とも言いえます。
複合語の項でも書きましたが、
こうしてできた長母音を、âのように山形をつけて書く本もけっこうあります。
当サイトの語彙集ではa^aのように書いてあります。
特例として、

(〜と)の前の母音は、100%に近い高い確率で長母音になり、


は
に変わります。

の前にはスペースを書いたり書かなかったりします。
つめて書く場合は動詞の現在3人称単数語尾ととても紛らわしい
(




の例のようにまったく同形になることもある)ので注意してください。
- 別の母音になる……もともと
は
+
、
は
+
なので、
や
と
、
(それぞれ長母音を含む)が合体して
、
になることがあります。
- 前の母音が半母音に変化する……つまり、
→
、
→
となるわけです。
- 子音が挿入される……まったく無関係の子音を挿入する。
この場合、元の形がわかりにくくなるので、
下の例のように−印を入れてわかりやすく書くこともあります。
このタイプのなかには、








→







(悪く説かれた)のように、
本来あった子音が復活したと思われるものもありますが
(サンスクリットでは「悪く」は

という接頭語である)、
まったく無関係のものも多いので油断できません。
- 母音と子音の間の連声
いろいろあるのですが、比較的よく出てくるものだけにしぼります。
- 短母音+子音で、この子音が重複する……日本語の「ひとり+こ」→「ひとりっこ」のようなものです。
などの有気音が重複するときは
のようになります。
ときには、長母音+子音で、子音が重複し、ついでにこの長母音が短母音化するケースもあります。

、

は、子音の前で、
、

になることがあります。
の変化
は、次に来る音によって変化することがあります。
辞書や語彙集でも、元の
で載せるか変化したほうで載せるか、
立場が異なることがあります。
- 母音の前では
になる。
いくつかの語は特例として
に変わります。
辞書や語彙集では
で終わる形を別見出しにしていることもあります。
- 子音の前で、対応する鼻音に変化する。具体的には、
、
、
、
、
の前→
、
、
、
、
の前→
、
、
、
、
の前→
、
、
、
、
の前→
、
、
、
、
の前→
となります。
原則としてこれだけですが、変り種として、

→
などいろいろあります。
- サンディへの対処法
まだいろいろありますが省略します。
パーリ語のサンディはいい加減なので、法則をいっしょうけんめい覚えても無意味です。
まずは実際の文にあたって、おかしな形が出てきたら、
似たような音の別の単語もひいてみるという工夫が必要です。
語と語の間のサンディは、忘れたころにたまに出てくる程度ですが、
複合語内の各要素間のサンディはけっこう頻繁です。
こういうものは辞書や語彙集に書いてあるのが普通なので、
まずは複合語の例で慣れていくのがいいでしょう。
サンスクリットとの対照
-
サンスクリットと同じ規則がけっこう多いので、
サンスクリットを知っているとかなり役立ちます。
くどいですが、パーリ語のサンディはいい加減ですし、
やったりやらなかったりもするので、柔軟に対処することです。