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英語では主語の意志でする動作を能動態、 主語が別者からなされる動作を受動態といいます。 古代ギリシア語ではこれに加えて中動態 (ギリシア語では「態」のかわりに「相」ということのほうが多いかもしれませんが) という「自分のためにする動作」を表す形があります。
こういうヨーロッパの言葉になじんだ目でサンスクリットの動詞を見ると、 なにやら、と呼ばれる形と と呼ばれる形があり、 前者が他人のための動作で、後者が自分のための動作か、 じゃパラスメーパダが能動態で、アートマネーパダが反射態か、ということになり、 そう呼ばれることになりました。 しかしこの「他人のため」「自分のため」という意味はしっかり守られておらず、 動詞一つ一つについて習慣的に、「この動詞はパラスメーパダだけ」 「この動詞はアートマネーパダだけ」「この動詞は両方」 というふうに決まっているものなので、 能動態、反射態という言い方を嫌って、パラスメーパダ、アートマネーパダと 呼ばれることも多数ありますから、 これはぜひサンスクリットの用語も覚えておいてください。 また、受動態はギリシア語みたいにしっかり3項対立になっておらず、 現在語幹以外では一部を除いて反射態が即受動態になっています。
ところで、能動態は英語でActive、すると頭文字はA。 受動態は英語でPassive、頭文字はPなので、 パラスメーパダ(P)、アートマネーパダ(A)ととても紛らわしいので、 それぞれの辞書や参考書で頭文字表記がなされている場合、 どっちの流儀の頭文字なのか、注意が必要です。
なお、それぞれの動詞が能動態のみなのか、反射態のみなのか、両方なのかは、 P、A、Uという略号で示している参考書もありますが、 たいていは語形をそのまま表記する形にしています。 だからそれぞれの形の能動態、反射態の語尾は、 少なくとも3人称単数だけはしっかり覚えておいてください。 現在は能、反。アオリストは能、 反または、完了は能または、反です。