[補講 by まんどぅーか]

数詞


  1. 基数詞
     語形変化の激しい言語では数詞の使い方は概して難しくなるものです。 サンスクリットもその例にもれません。
     しかし、基数詞そのものはまだ覚えやすい部類に属するでしょう。 なにしろ現代ウルドゥー語/ヒンディー語では、 数詞の生成規則が非常に不規則なので、 1から100までの数字を一つ一つしっかり覚えねばなりません。 それに比べればまだラクです。
     「どうせ読解だけしかしないんだから、数詞なんか覚えなくてもいいや」 と割り切れる人は別として、 基数詞はまず、本編に掲げてある部分はしっかり覚えましょう。すなわち、
    • 1〜10……ともかくこの通りしっかり覚えます。
       なお、本編では5〜10の末尾にみんながついていますが、 文法書によってはをつけない形を載せていることが多いと思います。 いま日本で出回っている本では、 菅沼文法ではをつけてますが、 ゴンダ文法や辻文法はをつけていませんね。 特に辻文法は「がないほうが正しい」とハッキリ書いているので、 ナシ派のほうが日本では多いかもしれません。 当サイトでは、「文法概説」はつき、 「変化表」はナシなので、統一がとれていませんね。 実際、これはどちらでもかまいません。 どうせ現実にはこの原形をそのまま用いるわけではなく、 適宜変化させて使うので、結局同じになります。 なお、つきで覚える人も、複合語の前半など、語幹をそのまま用いる箇所では、 で終わる他の名詞と同様に、を抜かした形で用いるのに注意してください。

    • 11〜19…… 基本的に「1の位」+という形になります。 1の位は語幹をそのまま用いますが、 上でつきで覚えている人は、ナシにする必要があります。 ただ、11、12、13、16、18はちょっと語形が変わります。 すると原則5割、例外5割ですね。結局は全部覚えたほうがいいでしょう。 なお、19のもう一つの形、というのは、 「20マイナス1」という表現です。 現代ウルドゥー語/ヒンディー語ではこういう言い方のほうが普通です。

    • 20、30、40…90という10の倍数…… とくに法則らしいものもないので、ともかくこの通り全部覚えてしまいます。

    • 100、1000、1万、10万…… これもそのまま覚えてしまいます。

     これらを覚えたら、次は中間数の言い方です。
    • 99までの中間数…… 「1の位」+「10の位」となります。 ただし1の位のうち、2、3、8はそれぞれ という形に変わります。 ただし、82、83、88は (←)、 (←)、 (←)なので、 連声に気をつければというもとの形になっています。 40台は、たとえば42ならのように両方の形が出てきます。これをまとめると……
      • 10台、20台、30台……必ず
      • 80台……必ず
      • その他(40台、50台、60台、70台、90台)……両方の形が共存
      となっています。実は、12、13、18は規則どおりだったんですね。 なお、接続させるときには外連声規則が適用されるので注意してください。

    • 200、300、2千、3千…… 2・100、3・100、2・千、3・千のように言います。 この点では日本語や英語と変わりません。 ただしそれをどうくっつけるかが問題です。 100、千……は後述のように中性名詞なので、 200は(中性両数・中性両数)、 300は(中性複数・中性複数) のように使うのが基本なのですが、 単純に語幹そのままでくっつける、つまり複合語タイプの言い方もあります。 これだと、となります。 こちらのほうが単純ですね。 なお、くどいですがこの言い方ではで終わる語幹はを取ってください。 500はです。ではありません。

    • 101以降の中間数…… 基本的に「下2桁」+「百の位」+「千の位」……というふうに、 下から上にさかのぼるような形になります。 しかも「+」のところでは(加える)という意味の形容詞を連結器として用います。 これも、複合語風に語幹をそのまま用いる言い方もできますし、 一番最後のケタの数にあわせる形で変化させることもできます。
       たとえば2984は、 Bucknellの『Sanskrit Manual』によれば、 (84+900+2000) となっていますが、全部を複合語にして、 と言ってもいいのだと思います。

     このほかにもいろいろな表現法があるようなのですが、 それは出てきたときに考えればいいことです。先に進みます。

  2. 基数詞の使い方
     さて、ここまではホンの序の口。 語形変化の激しい言語では、ここからがタイヘンなのです。 数詞自体がどう変化するのか、そして名詞に対してどういうかかり方をするのか、 この2点に注意してまとめていきましょう。
    • 1…… 変化表はこちらです。 型にしては為格、従格、処格(女性形ではさらに属格も)が異なりますが、 これは次講で扱う代名詞型の変化なのです。 そしてなんと、1のくせに複数もあるのですが、 複数のときには「若干」という別の意味になります。 さすがに両数はありません。
       そして1は、形容詞なので、名詞に対しては性と格の一致をします。 もっとも単数名詞を用いれば「1」という数詞を使う必要はないので、 頻度的にはそれほど出てきません。

    • 2…… 変化表はこちらです。 まるでという型形容詞の両数形のような変化になります。 やはり形容詞なので、名詞に対しては性と格の一致をします。 もっとも両数名詞を用いれば「2」という数詞を使う必要はないので、 頻度的にはそれほど出てきません。

    • 3と4…… 変化表はそれぞれ、 です。 複数形しかありません。 やはり形容詞なので、名詞に対しては性と格の一致をします。

    • 5〜19…… 変化表はこちらですが、 6と8はそれぞれ、 、 となります。 複数形しかありませんし、男性・中性・女性の別がありません。 それでも形容詞なので、名詞に対しては格の一致をします。

    • 20〜99…… 20以降は形容詞にならず、名詞扱いになります。 99までは単数女性名詞扱いになります。
       そして、名詞との関係は次の3つのうちのどれかを使います。 「20匹のカエルたち」でやってみましょう。 [女](20)、 「カエル」は[男](カエル)がどう変化するでしょうか。
      1. [数詞を意味によって格変化させる]+[名詞を複数形にして同じ格にする] ……(名女単主)+(名男複主)、 (名女単対)+(名男複対)など。 。
      2. [数詞を意味によって格変化させる]+[名詞を複数属格にする] ……(名女単主)+(名男複属)、 (名女単対)+(名男複属)など。 いわば「カエルたちの20」という言い方というわけです。
      3. 数詞を語幹のままくっつけて複合語にしてしまう ……(名男複主)、 (名男複対)など。
    • 100〜……数詞は単数中性名詞扱いになります。 使い方は20〜99と同じです。



  3. 序数詞
     第10まではともかく覚えるしかありません。 11〜19はなぜか基数詞とまったく同じ。 20以降は原則として基数詞の語幹にをつけたものになります。 変化は第3までが普通の型形容詞。 それ以降は、男性・中性形は型ですが、女性形は型になります。

  4. まとめ
     以上、駆け足で見てきましたが、数詞の使い方を覚えるよい方法は、 実際の文に触れることです。 この点で「文法概説」のネタ本『実習梵語学』は、 数詞に関する演習問題を載せていないという不満が残ります。 ぜひゴンダ文法の練習題10(会員専用)をやってみてください。