1-1 音論


    第1章 音論

  1. サンスクリット (、梵語) のアルファベットは49あり、ローマ字で転写すると次のようになります。
    1. 母音
      • イ. 単母音
        喉音 口蓋音 唇音 反舌音 歯音
        (ア) (アー) (イ) (イー) (ウ) (ウー) (リ) (リー) (リ) [(リー)]
      • ロ. 二重母音
        口蓋音 唇音
        (エー) (アイ) (オー) (アウ)
    2. 子音と半母音(便宜上 をつけます)
        無声音 有声音
        無気音 有気音 無気音 有気音 鼻音
      イ.喉音
      ロ.口蓋音
      ハ.反舌音
      ニ.歯音
      ホ.唇音

      ヘ.半母音 (口蓋) (反舌) (歯) (唇)
      ト.歯擦音 (口蓋) (反舌) (歯)  
      チ.気音 (喉)      
      リ.補助音声記号 アヌスヴァーラ
      アヌナーシカ
      ヴィサルガ
      ※このうち、はサンスクリットでは使用されません。単に、 に対する長母音が があるのに対応して、 に対してその長母音 をアルファベットに入っているというだけです。
      ※以上のほかに反舌音のがあるのですが、 ヴェーダ写本にしかなく、母音と母音の間に の音が来るときのみに現れます。
  2. 母音はすべて発声器官を閉鎖させずに発音されるのですが、その母音が発生する場所によって「喉音」「口蓋音」…などと名づけています。 その中でも は舌と口蓋との間を息が通過する際に生じます。 は舌の左右両側と上の歯根との間を息が通過する際に生じます。
  3. 子音のイロハニホ5行のうち、 第一列と第二列は無声音であり、 その他の列は有声音です。
  4. 子音のイロハニホ5行は、発声器官が完全に閉鎖されて出る音です。 その中でも が加わったものです。 その他の有気音も同様です。 は[ng]の音になります。 はチャ、はニャです。 反舌音は舌端と上口蓋の歯根とを接触して出します。 半母音は発声器官をちょっと閉鎖させて出します。 歯擦音は発声器官をちょっと開けて出します。 その中でも は舌の本と上口蓋との間を、 は舌の中と上口蓋との間を、 は舌の先端と上の歯の間を、 それぞれ息が通過して出ます。
  5. アヌスヴァーラとアヌナーシカはどちらも母音が鼻音化したもので、 ンのような音です。 なかでもアヌスヴァーラは、鼻音の次に子音が来るとき、その子音がどういう種類のものであっても、その鼻音の代用として使うことができます。 このほか、アヌスヴァーラとアヌナーシカの用法については、 272930を見てください。
  6. ヴィサルガは または の変化したものであり、この二つの子音が語末に来るときに用いられます。 また、口蓋音と唇音の前にあらわれるときは、閉鎖音になります。 (→31)
  7. 母音は語形変化などに際して二種類の変化をします。 元の母音を弱音階、 第一段階の変化を標準階(グナ)、 第二段階の変化を長音階(ヴリッディ)といいます。
    弱音階  
    標準階(グナ)
    長音階(ヴリッディ)  
    のグナが、ヴリッディがとなることがあります(→ 97161186 )。 に対応する弱音階は「母音ナシ」となります。
    [動](知る)→[名](知識)→[形]知識ある
    [動](動転する)→[形](むさぼる)→[名](むさぼり)
    [動](持つ)→[形](持っている)→[名](荷物)
    [動](適する)→[形](適する)→のヴリッディはナシ
    [動](落ちる)→[動](落とす)

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